ワイヤーカット放電加工機(Wire-cut Electrical Discharge Machine, WEDM)あるいは単にワイヤーカットとは、金属加工の一種である放電加工を用いて、金属を加工する方法、およびその工作機械のことです。細いワイヤーを電極として用い、ワイヤーと工作物間に発生する微細な放電によって工作物を溶融・蒸発させて除去し、複雑な形状の加工を行います。ワイヤーカット加工の原理ワイヤーカット加工は、加工液(通常は純水)中でワイヤー電極と工作物の間に数十μm程度の隙間 (放電ギャップ) を保ちながら電圧をかけ、この隙間で発生する放電現象を利用します。ワイヤー電極には、主に真鍮製のワイヤー線が使用されますが、タングステンやモリブデン製の電極線も用いられます。加工液には、純水の他に、水溶性や油性のものが存在し、加工材料や加工精度に応じて使い分けられます。ワイヤーと工作物の間で発生する放電は、以下のサイクルで進行します。絶縁破壊: 加工液によって絶縁されている状態から、電圧の上昇に伴いワイヤー電極と工作物の間で絶縁破壊が発生します。アーク放電と溶融: 絶縁破壊により、パルス電流が流れ込みアーク放電が発生します。この時、局所的に数千℃~1万℃以上の高温となり、工作物表面が溶融します。溶融金属の除去: アーク放電の発生に伴い、加工液が気化し体積膨張を起こします。この爆発的な膨張によって溶融した金属が除去されます。復旧: パルス電流が流れなくなり、再び加工液が隙間を満たし、絶縁状態に戻ります。このサイクルを高速に繰り返すことで、連続的に工作物を溶融・除去し、ワイヤー電極の動きに倣って加工を進めていきます。ワイヤーカット加工の特徴ワイヤーカット加工は、他の加工方法と比較して、以下のような特徴があります。メリット複雑形状加工への対応: 細いワイヤーを電極として用いるため、複雑な形状の加工に適しています。金型製作などで威力を発揮します。高精度加工: 放電現象を利用するため、機械的な力が加わらず、高精度な加工が可能です。難削材への対応: 熱伝導率の低い材料や硬い材料でも加工が可能です。超硬合金や焼き入れ鋼なども加工できます。加工面への影響: 熱影響層が小さく、加工面へのダメージが少ないです。自動化: NC制御により自動化が可能であり、複雑な形状の加工も高精度に行えます。デメリット加工速度が遅い: 他の加工方法と比較して、加工速度が遅いです。加工できる厚さに限りがある: 加工できるワークの厚さは、機種によって異なりますが、最大でも数百mm程度に限られます。加工可能な材質: 電気をよく通す材料(導電性材料)でないと加工できません。ワイヤーカット加工の用途ワイヤーカット加工は、以下のような用途に用いられます。金型製作: プレス金型やプラスチック金型など、複雑な形状の金型製作に適しています。特に、高精度な加工が求められる精密金型の製作に多く用いられています。精密部品加工: 医療機器部品や電子部品など、高精度な加工が求められる部品の製作に用いられます。試作品製作: 短納期で試作品を製作する必要がある場合に、その加工速度と柔軟性から適しています。試作品に関するお悩みなら346にご相談ください弊社346は、製造業に特化し、様々な専門家を有するメンバーで構成された組織であり、新商品の企画・設計・試作の支援など、製品開発全域にわたる総合支援を行っています。346の支援実績を見る 「新商品開発の依頼先がたくさんあってコミュニケーションが大変...」「どの部品をどの加工方法でつくればいいかわからない...」「図面を作るのが手間..3Dで出図したい...」 そんなお悩みのある方はぜひ、資料請求ページからお問い合わせください。Wrriten by 346 inc. with Xaris