クロムモリブデン鋼は、鉄に僅かなクロムとモリブデンを添加した低合金鋼の一種です。「クロモリ」とも呼ばれます。通常の機械構造用の炭素鋼などに比べて高い強度と硬さを持っています。酸化被膜が形成されるため、耐食性・耐塩水性にも優れています。切削や溶接などの加工がしやすい点や、材料を入手しやすい点もメリットもあります。機械部品や建築資材など、幅広い分野で活用されています。クロムモリブデン鋼の特徴クロムモリブデン鋼の特徴は以下の通りです。高強度・高靭性クロムモリブデン鋼は、炭素鋼に少量のクロムとモリブデンを添加しています。これにより、鋼の結晶格子が強化され、非常に高い機械的強度と靭性を発現します。耐食性・耐塩水性が高いクロムモリブデン鋼は、クロムによって酸化膜が形成されます。これにより、金属表面を大気中の酸素や水分から保護することができるようになります。ただ、クロムの含有量は多くないため、ステンレス鋼などに比べると耐食性・防錆性は低いといえます。耐塩水性に優れており、海で使う製品に向いているという特徴もあります。加工性クロムモリブデン鋼は、切削加工や溶接などの一般的な加工が比較的容易です。硬度が高いものの、均一な組織と適度な靭性を有しているため、機械加工性に優れています。また、熱処理によって様々な強度特性を持つ部品を製造することができます。原料を入手しやすい、安価であるクロムモリブデン鋼は、クロムやモリブデンの含有量が少なく、ステンレス鋼などの合金よりも安価に原料を調達できます。こうした原料の入手しやすさが、クロムモリブデン鋼の製造コストを抑える一因にもなっています。クロムモリブデン鋼の種類クロムモリブデン鋼には、炭素量やクロム・モリブデン含有量により多くの種類があります。代表的なものとしては以下の通りです。SCM415:炭素含有量が0.13~0.18%前後と低めに設定されており、加工しやすいクロムモリブデン鋼。SCM418:炭素含有量が0.16~0.21%と低く、表面焼き入れなどの加工が可能なクロムモリブデン鋼。.SCM420:炭素含有量が0.18~0.23%と適度に高く、比較的高い硬度と強度を持ちながらも、熱処理によって更なる機械的特性の向上が可能なクロムモリブデン鋼。SCM425:炭素含有量が0.23~0.28%と比較的高めに設定されており、焼入れ可能なクロムモリブデン鋼。SCM430:炭素含有量が0.25~0.30%と比較的高めに設定されており、溶接などの加工に不向きなクロムモリブデン鋼SCM432:SCM432は炭素含有量が0.27~0.37%と比較的高めに設定されており、溶接などの加工に不向きなクロムモリブデン鋼SCM435:SCM435は炭素含有量が0.33-0.38%と比較的高めに設定されており、溶接などの加工に不向きなクロムモリブデン鋼SCM440:SCM440は炭素含有量が0.38-0.43%と比較的高めに設定されており、溶接などの加工に不向きなクロムモリブデン鋼SCM445:炭素含有量が0.43-0.48%と高めに設定されており、溶接などの加工に不向きなクロムモリブデン鋼SCM822:炭素含有量が0.20-0.25%と低く、溶接などにも対応できるクロムモリブデン鋼