BOM(部品表)とはBill Of Material の訳であり、製品を構成する部品の基本情報がまとめられた構成図のことです。BOMを上手く活用することができれば、業務効率化や部門間の連携の強化を図ることができます。しかしBOMの管理においては、部門間のデータ形式の不一致などの課題があり、製品全体で効率的に活用できるようになるには一定の労力が必要となります。この記事では、BOMの概要や目的、課題、BOM管理のシステム化などについて解説します。製造業に携わる方は必ずと言って良いほど、業務で登場するBOMですので、是非、開発業務や製造業務に関わる方は本寄稿をご参考ください。筆者経歴株式会社346 創業者 共同代表 菅野 秀株式会社リコー、WHILL株式会社、アクセンチュア株式会社を経て、株式会社346を創業。これまで、電動車椅子をはじめとする医療機器、福祉用具、日用品などの製品開発および、製造/SCM領域のコンサルティング業務に従事。受賞歴:2020年/2015年度 グッドデザイン大賞(内閣総理大臣賞)、2021年/2017年度 グッドデザイン賞、2022年 全国発明表彰 日本経済団体連合会会長賞、2018 Red dot Award best of best、他。アイティメディア株式会社の情報ポータル「Monoist」で連載中。1. BOM(部品表)とは?BOM(Bill Of Materials)は、製造や開発現場で使用される「部品表」のことです。製品の部品の品名やメーカー名、型式、規格番号などの基本情報が記載された構成図を指します。そして、BOMは製造業の各部門において、ユニットや部品の管理に使用されます。例えば製造部門では、各部品の組み立て順序や加工リードタイム、生産計画などの情報を管理するために用いられ、購買部門では部品の所要量や仕入れ先などの情報を管理するために用いられます。また、BOMは部門間で製品の情報を共有する役割も果たします。詰まるところ、BOMを上手く活用すると生産管理の効率化や各部門の連携強化を図ることができるのです。しかし、BOMの管理には課題もあるので注意が必要です。(1)BOMの目的BOMを使用する目的は大きく2つあります。1つ目の目的は生産管理の効率化です。BOMを作成することで、製品を構成する部品の情報を確認することができます。BOM と生産計画の情報を組合せ、各部品の所要量や調達量を検討が可能となります。2つ目の目的は各部門の連携強化です。BOMは設計部門や生産部門、購買部門などの部門間を横断して製品情報を共有する際に用いられます。ただし、それぞれの部門で必要になる情報が異なるため、部門ごとに独自の形式をとる企業も少なくありません。詳しくは後述しますが、部門ごとに異なる形式が使用されている場合、無駄な管理コストが発生することもあります。2. BOMの種類BOMの種類は、大きくわけて「管理方法別の種類」「用途別の種類」に分けられます。以下で詳しく解説します。(1)管理方法別のBOM2種類管理方法別のBOMの種類は2つあります。【管理方法別のBOMの種類】名称概要特徴①サマリ型製品の製造プロセスと関係なく、一覧で部品がリストアップされている部品表・手配する部品の数がわかりやすい②ストラクチャ型製品の製造プロセスを踏まえて階層構造をとった部品表・製造プロセスや加工順序、リードタイムを計算しやすい。(2)用途別のBOM用途別(部門別)に分けると、以下のとおりの種類があります。【用途別のBOMの種類】名称概要詳細①E-BOM(設計部品表)設計図に則り、仕様を満たす部品の情報がまとめられた部品表・必要になる部品の数量や仕様、技術に関する情報を管理しやすい形式がとられている②M-BOM(製造部品表)組み立て順序や、加工プロセスに関する情報がまとめられた部品表・組み立て順序や加工リードタイム、生産計画、製作指示などの情報を管理しやすい形式がとられている③P-BOM(購買部品表)部品の調達に関する情報がまとめられた部品表・それぞれの部品の手配数や仕様、仕入れ先などの情報を管理しやすい形式がとられている④S-BOM(サービス部品表)製品のメンテナンス業務やサービス業務に必要な情報をまとめた部品表・製品のメンテナンス業務や、保守・サポートなどのサービス業務で用いやすい形式がとられる3. BOMの管理におけるよくある課題BOMの管理におけるよくある課題は3つあります。手作業によるミスの発生管理コストの増大部門間でのシステム差異(1)手作業によるミスの発生多くの場合、BOMはExcelや紙を使って手作業で作成されているため、抜け漏れなどの入力ミスが発生する恐れがあります。特に部品数や組み立てにかかる工数が多い製品の場合は、入力する情報も多くなるため、その分ミスが発生する可能性が高まります。もし、紙で作成している場合は、ミスの修正や内容の変更が生じると、社内で共有するのに時間がかかります。前述したとおり、BOMは部門ごとに形式が異なるため、内容の追記や修正があった際の他の部門との連携は非常に煩雑になります。(2)多くの管理コストの発生BOMの管理にはしばしば多くのコストが発生します。特に、サイズや色などのバリエーションが必要な製品や、オーダーメイドを行う製品などのBOMは、情報量が膨れ上がり管理に多くの労力や時間がかかります。また、前述したようなミスを防ぐためのチェックが必要な場合は、さらに管理コストが発生してしまいます。そして、BOMの管理コストの増加は、価格競争力の低下や、リードタイムの増加にもつながりますので留意が必要です。(3)部門間で形式(システム)が異なる前述のとおり、BOMは部門ごとに必要な情報が異なるため、部門間で別々の形式が用いられる場合も少なくありません。こうした状況の場合、部門ごとに使用するシステムが異なることも少なくなく、部門間の連携が非効率になる場合があります。部門ごとに異なる品目コードを利用している場合など、同じ部品であるにも関わらず表記の違いがあれば確認作業が発生するため、さらに連携が非効率性になります。とはいえ、品目コードの統一は用意ではなく、運用で柔軟に解決することもやぶさかではありません。4. BOMの課題を解決するシステム化|PLMについてBOMにまつわる課題を解決する手段のひとつとして、PLMシステムの導入が挙げられます。PLMとは、「Product Lifecycle Management」の略であり、製品ライフサイクル全体を一元的に管理する手法・システムのことです。PLMのシステムを導入すれば、設計や製造、販売、保守などの各プロセスの情報を相互に関連付けて管理できるようになります。これにより、部門間の情報共有や連携をスムーズに行うことができます。PLMシステムには、BOM管理機能、CADデータ管理機能、取引先情報の管理機能などがあります。これらのPLMシステムの機能を駆使すれば、、BOMの一元管理や、部門間での共有、情報の変更・修正があった場合のリアルタイム反映などを実現することができます。5. BOM管理をシステム化するメリットPLMシステムを導入して、BOM管理をシステム化するメリットは3つあります。人的ミスを減らせるBOM管理の業務量を減らせる情報共有のスピードが上がる(1)人的ミスを減らせるBOMのシステム化は、ミスの低減にも効果的です。前述の通り、紙やExcelを使ってBOMを管理する場合は、各部門で別々の形式を用いる際の変換や転記の人為的なミスを避けられません。しかしシステム化によって部門間でBOM情報を統合できれば、人的ミスの低減が可能となります。(2)BOM管理の業務量を減らせるPLMシステムなどを導入し、BOM情報を一元管理できれば、BOM情報の追記・修正が発生した際も、全部門でリアルタイムに確認を行うことができます。これにより、情報共有にかかる時間・労力を削減することができます。また、BOMのシステム化は、これまで作成したBOMデータの蓄積も可能にします。これにより、新製品の企画や設計にかかる工数をも削減することが可能です。(3)情報共有のスピードがあがる紙やExcelでBOMの管理を行う場合、、BOM変更および各部署への連携には一定の時間を要することとなります。しかしBOM情報が統合的にシステム管理できていれば、BOM変更および関連部門への情報連携を一括で行え、対応に要する時間を格段に低減する事ができます。6. 製造業のお悩みなら346にご相談くださいBOMは製造業において必要不可欠なものですが、運用における課題も多く、規模の大きい事業についてはシステム化などの施策を導入する必要があります。「自社でBOMを活用する仕組みを改善したい」「自社でPLMシステムを活用する際の注意点を知りたい」「自社の部門間の連携を強化したい」「自社の業務効率化を図りたい」という場合は、弊社346にご相談ください。弊社346は、製造業に特化した様々な専門家を有するメンバーで構成されており、製造業の課題解決を総合的に支援する事業を行っています。初回無料相談も行っているので、製造業に関するお悩みがあれば346までお問い合わせください。製造業の経営に関する解説記事製造原価とは売上原価との違いや計算方法、活用方法などを解説技術戦略とは?メリットや注意点、立案方法、導入事例を解説デザイン経営とは?成功事例や効果的な実践方法をわかりやすく解説デザインマネジメントとは?デザイン経営との違いや具体的な業務を徹底解説ものづくり補助金とは?(2023年版)申請方法やポイント、条件など解説国内製造業の課題とは?2023年経産省の資料に基づくDXなど解決策も<株式会社346について>346(サンヨンロク)はデザイン経営を中核にしたものづくりでテクノロジーの民主化を目指す開発・製造総合支援企業です。インダストリアルデザイナー、ハードウェアエンジニア、ビジネスコンサルタントなど様々な専門家で構成されています。346へのデザイン・製品開発依頼はCONTACTよりお問い合わせください。<ものづくりが好きな仲間を探しています>弊社346ではデザイナーやエンジニアを募集しています。興味関心がある方はCAREERSよりお問い合わせください。弊社346では、本記事の連載または出版にご協力いただける企業を募集しています。興味関心がある方はCONTACTよりお問い合わせください。