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私は30年以上に渡りメーカーのデザイン部門でデザインマネジメントの業務に従事してきました。しかし、私が「デザインマネージメントに関わる仕事をしていました」と言っても、「それどんなことをやるんですか」と聞き返されることが多くあるように、その業務の具体的な内容はあまり知られていません。
そこでこの記事では、そもそもデザインマネジメントとはいったい何なのか、デザイン経営との違いや具体的な業務内容について丁寧に説明していきます。
株式会社346
デザインコンサルタント 我妻 亨37年間自動車会社のデザイン組織に勤務。内装デザインに6年間従事したのち、デザインのマネジメントの関わる業務に携わる。デザイン調査・企画、デザイン意思決定、デザイン総務、デザイン人材育成、課題解決などに従事。その間海外駐在、デザインコンサルタント会社出向、企画統括部異動など本体周辺部門での業務も経験。
「デザインマネジメント」という言葉を「デザイン経営」につなげて説明している例を多く目にします。デザインを経営資源として捉えて経営者がデザインを積極的に活用することには賛成ですが、それを「デザインマネジメント」と呼ぶのはデザインのマネジメントに関わる領域で仕事をしていた身からすると違和感があります。
デザイン実務におけるデザインマネジメントとはデザインでマネージメント(企業経営)するのではなく、デザインのマネージメント(やりくり)をする事です。
私なりに定義するのであれば、
「デザインマネジメント」とは、デザインの創造方法(課題やプロジェクトに対するアイディアの拡大と収束方法)の管理、および、デザインすべき製品の実行責任を果たすためにヒト/モノ/カネ/情報/時間を調整することであり、またはその仕組みづくりをすることです。
一方「デザイン経営」とは、デザイン資源やデザイン方法論を企業経営の一部としてどう活用するかに焦点があてた、企業経営手法です。
関連記事:デザイン経営とは?成功事例や効果的な実践方法をわかりやすく解説
対象としている製品によってデザインマネジメント業務の範囲は様々ですが、ある会社の例を以下に上げます。

デザインの組織を作る
製品の内容、関連部署との関係、プロジェクトの進め方、様々な外部環境に合わせてデザイン組織の体制を時代とともに進化させます。 「それに伴ってデザインメンバーの人員構成や仕事のプロセスが変化します。最近では外観デザイン・内装デザイン・色材デザインに加えてUX/UIのデザイン部署が追加になった例があります。
デザインを行う人材を集める
人事/採用に関わる仕事です。時代とともに必要な人材は変わる為、それに合わせた採用計画を考えます。また必要な人材を得るために教育現場との連携も行います。
デザインメンバーの評価と教育の仕組みづくり
これも人事に関わる仕事です。単に一定の評価基準に沿って成績をつけるだけではありません。デザインといっても色々な仕事がありますから、どこに向いているのか、どんな仕事を経験してきたのかなど様々な視点の評価基準を策定します。また、今後の育成方針を一人一人つくって、教育プログラムに当てはめるなど行います。
デザインを進める道筋を整える
これはいわゆるデザインプロセスの事です。プロジェクトの進捗にあたってどんなアクティビティをどのくらいの時間で行なうのか、スケッチやモデルの必要数や人員数などを時間軸と共に設計します。特に近年はディジタルツールの発達が目覚ましく、それら機器を導入することによってプロセスの方法やそれにかける時間が大きく変化しています。
デザインを次へ移すフィルターを考える
プロセス上のマイルストンの事です。製品デザインは初めから完成形が生まれるのではなく段階を踏んでデザインを完成させていきます。したがって、それぞれのマイルストンで何が決まっていなければならないかを明示する必要があります。これはプロセスを作るときに同時に検討します。
デザインを決める場の設定と運営をする
デザインを進める道筋(プロセス)、次工程へのフィルタ(マイルストン)と併せてデザインの意思決定を行う場の設定も重要です。決定者を誰にするか、審議メンバはどの部署のどのレベルの人が必要なのかを決め、デザインマネジメント担当者が会議の進行役も務めます。
トレンド情報や業界の情報を収集し展開する
同業他社の情報だけでなく、広く生活の変化や社会の変化の情報も収集分析します。これを実施する為の情報収集・ネットワーク構築も仕事の一つです。
進捗管理と会議運営
プロジェクト毎の進捗確認をする為の定期的な会議の開催と運営、およびこれに必要なモデリングの予算取りを行います。
デザイン組織運営のための予算策定
先にあげた業務を通じてデザインを創造するために必要な予算計画を策定します。
デザイン創造する環境/場を整える
創造の場としてのクリエイション環境づくりは大切ですが、仕事の流れを考慮した場づくりにも取り組みます。
デザインをする/作る道具の導入
小さなところではスケッチをする道具の選定と導入、大きなところではフルスケールモデルを作るための工作機械の導入などを行います。
デザインを決める道具の導入
デザイン開発の道具の変化と併せてデザイン意思決定の道具も変わってきました。現場ではスケッチのデータを基に実物大の映像で確認できるVRゴーグルなどが導入されるなど、ディジタル技術の活用によってデザイン意思決定の場は大きく変化しています。
デザインメンバーのモチベーションを高める仕掛けを考える
デザインスタジオの環境づくりをはじめとし、それ以外に季節ごとの交流イベントを実施することも仕事の一つです。
デザインの独自性をまもる
これは意匠登録、実施補償、特別保証の事です。(デザインマネジメントのこぼれ話No4に記載)
お客様とのタッチポイントのデザイン監修
具体的には広告、パンフレット、店舗、ショールームなどを指します。これらの仕事の担当者はプロダクトデザイナー以外に前職が広告代理店勤務だったり建築出身の人達もいます。
以上、私が今まで関わってきたデザインマネジメントの仕事を具体的に解説しました。次回以降はこれらの業務をひとつづつ事例を含めて詳細説明していきます。
(注1) すべての企業がここに書かれているとおりのことを実施しているとは限りません。企業の歴史や業態によっていろいろな違いがあることをご了承ください。
(注2) ある製造業のインハウスデザイン組織についての記述ですが、秘匿にかかわる事例は避け、現時点で共有できる範囲にとどめてあります。
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