新着記事はTwitterでご連絡いたします。下記URLから是非ご登録ください。Twitter: https://mobile.twitter.com/346design私が「デザインマネージメントに関わる仕事をしていました」と言っても、「それは具体的に何をするのですか」と聞き返されることがありました。このブログでは、デザインマネージメントについて少しずつ紹介していこうと思いますので、お付き合いください。今回は5回目となり、意匠登録についてお話しします。筆者経歴株式会社346 デザインコンサルタント 我妻 亨37年間自動車会社のデザイン組織に勤務。内装デザインに6年間従事したのち、デザインのマネジメントの関わる業務に携わる。デザイン調査・企画、デザイン意思決定、デザイン総務、デザイン人材育成、課題解決などに従事。その間海外駐在、デザインコンサルタント会社出向、企画統括部異動など本体周辺部門での業務も経験。デザインにも著作権がある自動車デザインに関わる仕事には、「形や色を発想する仕事」「形や色を具現化する仕事」「組織運営をする仕事」というものに加え、「デザインを保護する仕事」があります。この仕事は、知的財産部という部署が担っています。通常の企業では、デザイン以外にも発明や独自設計などの権利を守る活動も行っているため、独立した部署構成になっています。さてデザインの著作権の話ですが、市場でヒットした商品があっても、同じデザインのものが出てきません。もちろん、お客様から「コピーだ」とか「真似っこだ」と言われて後ろ指をさされたくないからですが、法律でも保護されています。これが意匠制度です。新規性のある発明には特許、商品の名前には商標登録があるのと同様に、身の回りの製品に対しては意匠登録という制度があり、デザインした人や企業の権利を保護しています。ただし、新しいアイデアが浮かんだからといってすべてが意匠登録できるとは限りません。登録可能かどうかは知的財産部の担当者がひとつずつ確認します。その際には、次のような条件があります。① 工業上利用できる意匠であること(形や色が明確で量産可能なこと)② 今までにない新しい意匠であること③ 容易に創作できたものでないこと(同業者が簡単に思いつくものではないこと)④ 他人よりも先に出願していること⑤ 先に登録された意匠と似ていないこと⑥ 公序良俗に反しないことなどがあります。(下記特許庁の意匠制度の概要より引用)知財部の担当者はデザインのプロではないので、過去の自社車や他社車の資料を見せて説明します。このため、結構手間がかかります。 意匠登録には、特許庁に出願・出願公開及び審査・登録というステップが必要で、その後初めて権利が発生します。意匠登録その後、補償と報奨意匠登録を出願した後、発想したデザイナーに対しては、何が起こるのでしょうか。補償と報奨が行われますが、その前に、発想した意匠の行方を説明しておきます。企業に勤めるインハウスデザイナーの場合、業務で発想した意匠の権利は企業に帰属するため、市場で得た利益は企業のものになります。後になって、業績評価によって給料が上がったり昇格したりすることはありますが、デザイナー自身が直接的な利益を得ることはありませんでした。しかし、青色ダイオードの裁判後、企業はある発明によって利益を得た場合、それに相応する対価を発明者に支払わなければならなくなりました。この考え方が意匠制度にも及んでおり、現在の補償と報奨の制度ができあがっています。補償には、出願補償と実施補償の2種類があります。出願補償は、意匠を出願した時に支払われるものであり、実施補償は、製品が発表・発売された時に支払われます。それぞれ規定された金額の補償金が支払われ、デザイナーにとっては新しい意匠を発想したことに対する会社からの対価ということになります。意匠登録をすれば、自動的に入ってくるもので、ポケットマネーになることもあります。さらに報奨制度もあります。すべての企業が実施しているわけではありませんが、市場で評判になって企業に有形無形の利益をもたらした場合に、デザイナーに対して報奨金が支払われることがあります。私が在籍した会社では、意匠特別補償という名前で制度化されており、対価が大きいため、明確な評価基準が設けられ、デザイン部門のボードメンバーミーティングによって決定されていました。また、対価が大きいこともあり、結果の公開は避けられていました。報奨制度についての対価は会社によって異なりますが、お金が支払われる場合もあれば、経験の提供という形で行われることもあります。まとめ意匠補償制度には、出願補償、実施補償、そして特別補償(報奨)の3段階があり、それぞれに対価が支払われます。しかし、デザイナーたちが目指すのは、補償金や報奨金を得ることではなく、自分のアイデアが具現化されて人々に受け入れられることですので、あしからず。また、特別補償(報奨)を受けるのは一人のデザイナーだけではありません。プロジェクトに関わったメンバー全員に、その貢献度に応じて配分されます。デザインの仕事は共同作業ですので。(注1) すべての企業がここに書かれているとおりのことを実施しているとは限りません。企業の歴史や業態によっていろいろな違いがあることをご了承ください。(注2) ある製造業のインハウスデザイン組織についての記述ですが、秘匿にかかわる事例は避け、現時点で共有できる範囲にとどめてあります。関連記事デザインマネジメントのこぼればなし 第1回 「デザイン組織のいろいろな人々」デザインエンジニア概論 第1回「デザインエンジニアとは」ハードウェアスタートアップのデザイン戦略 第1回「日本の製造業概況」デザイナーが知っておきたい 知財文献紹介【第1回】電池式携帯電話用充電器まんがでわかるインダストリアルデザイン 第1話「インダストリアルデザインってなんだろう?」デザイン漫遊記 ① スティックレー家具346 COMPANY LOG | 創業ストーリー<株式会社346について>346(サンヨンロク)はデザイン経営を中核にしたものづくりでテクノロジーの民主化を目指す開発・製造総合支援企業です。インダストリアルデザイナー、ハードウェアエンジニア、ビジネスコンサルタントなど様々な専門家で構成されています。346へのデザイン・製品開発依頼はCONTACTよりお問い合わせください。<ものづくりが好きな仲間を探しています>弊社346ではデザイナーやエンジニアを募集しています。興味関心がある方はCAREERSよりお問い合わせください。<連載メディアを募集しています>弊社346では、本記事の連載または出版にご協力いただける企業を募集しています。興味関心がある方はCONTACTよりお問い合わせください。参考文献1.ー