新着記事はTwitterでご連絡いたします。下記URLから是非ご登録ください。Twitter: https://mobile.twitter.com/346design筆者が、「デザインマネージメントに関わる仕事をしていました」と言っても、「それどんなことをやるんですか」と聞き返されることが多くありました。このブログではデザインマネージメントの事について少しずつ紹介して行こうと思いますので、お付き合いください。前回はデザインプロセスの中でのデザイン意思決定の位置付けについて書きましたが、今回4回目ではデザインの意思決定の場の作り方の話です。特に、メンバリングと意思決定者の論議へのかかわり方について書きたいと思います。筆者経歴株式会社346 デザインコンサルタント 我妻 亨37年間自動車会社のデザイン組織に勤務。内装デザインに6年間従事したのち、デザインのマネジメントの関わる業務に携わる。デザイン調査・企画、デザイン意思決定、デザイン総務、デザイン人材育成、課題解決などに従事。その間海外駐在、デザインコンサルタント会社出向、企画統括部異動など本体周辺部門での業務も経験。アウトプットから考える/意思決定のレベル設定とメンバー構成前回のブログでは『日程は後ろから決まる』と書きました。これは意思決定の場である「意思決定会議」のすすめかたにも影響を与えます。意思決定会議では、各マイルストーンではあらかじめ設定された関係者が、あらかじめ設定した基準をもとにフェーズの完了や、成果物などが要求事項に基づいて作られているかを確認します。 この場では、該当する日程(デザインプロセス)の中で何を決めるべきか明確にすることがポイントになります。 次工程で、商品コンセプトやデザインコンセプト作りを始めるのか、アイディアスケッチを始めるための発想の範囲を決めるのか、スケールモデルやバーチャルモデルを作り始めるためのデザインセレクションをするのか、フルスケールモデルを作るためのセレクションなのか、最終デザインを決定するのか、デザイン作業を終了してデータ発行をするのか、等々にあわせてそれが部内レベルなのか、部門間レベルなのか、会社レベルなのかによって会場、提示物、説明者、審議メンバーが変化します。 例えば、モデリングへ移行するためのスケッチセレクションであれば、商品/デザインコンセプトに合致したテイストであることはもちろん三次元での成立性が課題になります。参加者は提案者である各デザイナー、審議メンバーはデザインマネージャーやデザインダイレクターを含むデザインヘッドや関連部署である商品企画と設計の担当マネージャーが参加します。 会社レベルである最終デザイン決定では、経営会議であるために役員が審議メンバーであり、意思決定者は社長、情報提供は企画・デザイン・設計・マーケット&セールスの担当役員からなされます。 決めるために必要な情報/条件とは デザイン意思決定会議のレベルごとのメンバー構成について概略を説明しましたが、この章ではどういった情報が提示されるのかについて解説します。その情報とは、次工程につなげられるかの判断や課題設定ができる情報です。 論議の流れ下記の事項を論議して次工程へ移行するデザインの選定と課題の合意を行います。 ① 商品企画やデザインの狙いや満足させるべき事柄(前提条件)② デザイン担当からの提案物③ 現在の状態と今後起きうる問題点(合致点と乖離点/審議のポイント)④ 結論及び次工程への課題誰がどんな情報を提示するのか商品企画情報(商品企画部門からの情報提供)商品の役割と狙い、市場でのポジショニング、現行車の市場での評価、競合他車の予測、ターゲットカスタマー像、売りのポイントなど デザイン提案(デザイン部門からの提案)外形デザイン、内装デザイン、カラー&マテリアルデザイン、UX/UIデザインなど 設計条件との整合性(設計からの説明)設計から提示した条件を満たしているか、乖離している部分はどこか、今後どのように整合させるのかなどの確認具体的には、設計担当から提示される、〔諸元寸法、機能部品の配置、インターフェイスの操作性、生産性を加味した形状条件、法規上の制約〕などを指します。デザイン側は設計条件を全く無視してスタイリングするわけではないが、時にはデザインが作りたい形状/仕様と設計条件が一致しない場合があります。その時には上位の決裁者に上げて決定していくこととなります。 市場性予測(セールス&マーケティング部門からの情報提供)『目標台数が達成できそうかどうか』 についての情報提供であり、顧客動向などを含む 経営視点での予測(プログラムダイレクターからの説明)会社の経営計画に基づく、当該企画の収益性についての情報決めるのは誰か(意思決定者) 初めにも書きましたが、各マイルストーンではあらかじめ設定された関係者が、あらかじめ設定した基準をもとにフェーズの完了や、成果物が要求事項通りかを確認します。 意思決定者の中立性の確保各マイルストーン会議の意思決定者は議長ですが、意思決定者自身が議事進行を司ることはなく議事進行自体は司会/Master of Ceremony(MC)に委ねられます。これは意思決定者の中立性を保つための工夫です。意思決定者が発言者を指名したり、議事を進めたりすることはしません。 必要な意見が出尽くすまで、または論議が終わるまで意見を言いません。論議中や情報提供のタイミングで口をはさむと論議がブレるからです。決定に必要な情報を得るために質問することはありますが、基本的には情報提供者からの意見が出切るまでは聞き役です。論議を誘導しないことが大切です。 意思決定者の仕事では意思決定者が行うことは何でしょうか。 ディシジョンマシーンになることが、意思決定者に求められることです。行うことは下記の3つの判断です。 ① 承認(GO)あらかじめ設定した基準をクリアしたので次の工程に進む、または成果物の制作完了を承認する。 ② 中止/停止(NO GO)あらかじめ設定した基準をクリアしておらず、今後のプロジェクト継続が困難と判断した場合は中止または停止を判断する。プロジェクト進行中に急激に市場環境が変化したような場合にも中止判断を行なう場合がある。 ③ やり直し(REDO)あらかじめ設定した基準が一部クリアしておらず、もう一度当該フェーズのやり直しを指示する。 まとめ ここで書いたことを改めてまとめると。 ① 各フェーズのデザイン決定は形の良し悪しも大切だが、次工程の作業に移れるかがポイント② デザイン決定とはいっても企業レベルで考えると企画/設計/生産/市場性なども考慮される③ 意思決定者はあくまでも判断者に徹するような会議の仕組みを作る事④ デザインを前にすると参加者は得てして形の良し悪しや好き嫌いの意見を言いやすいのですが、会議の場ではそれぞれのレスポンシビリティに基づいた発言をしてもらうような場づくりをする。(デザイナーだけの論議の場であっても、製品を作る以上は使用者/機能性/生産性/廃棄性などについても論理的なディスカッションが行われるべきだと考えます) ここまで長い文章になりましたが、ご一読ありがとうございました。(注1) すべての企業がここに書かれているとおりのことを実施しているとは限りません。企業の歴史や業態によっていろいろな違いがあることをご了承ください。(注2) ある製造業のインハウスデザイン組織についての記述ですが、秘匿にかかわる事例は避け、現時点で共有できる範囲にとどめてあります。関連記事デザインマネジメントのこぼればなし 第1回 「デザイン組織のいろいろな人々」デザインエンジニア概論 第1回「デザインエンジニアとは」ハードウェアスタートアップのデザイン戦略 第1回「日本の製造業概況」デザイナーが知っておきたい 知財文献紹介【第1回】電池式携帯電話用充電器まんがでわかるインダストリアルデザイン 第1話「インダストリアルデザインってなんだろう?」デザイン漫遊記 ① スティックレー家具346 COMPANY LOG | 創業ストーリー<株式会社346について>346(サンヨンロク)はデザイン経営を中核にしたものづくりでテクノロジーの民主化を目指す開発・製造総合支援企業です。インダストリアルデザイナー、ハードウェアエンジニア、ビジネスコンサルタントなど様々な専門家で構成されています。346へのデザイン・製品開発依頼はCONTACTよりお問い合わせください。<ものづくりが好きな仲間を探しています>弊社346ではデザイナーやエンジニアを募集しています。興味関心がある方はCAREERSよりお問い合わせください。<連載メディアを募集しています>弊社346では、本記事の連載または出版にご協力いただける企業を募集しています。興味関心がある方はCONTACTよりお問い合わせください。参考文献1.ー