新着記事はTwitterでご連絡いたします。下記URLから是非ご登録ください。Twitter: https://mobile.twitter.com/346design 私が「デザインマネージメントに関わる仕事をしていました」と言っても、「それどんなことをやるんですか」と聞き返されることが多くありました。このブログではデザインマネージメントの事について少しずつ紹介して行きますので、お付き合いください。 今回は3回目、「デザインの意思決定」の話です。 プロジェクトの日程は後ろから決まる 工業製品を作る仕事を想像してください。 商品が店頭やウェブショップ上に並んでいますね。その前はどこにあったかというと、工場にいました。その工場の中でも梱包の工程があったり、検査や戦場の工程があったり、組み立てラインがあったり、もちろん組み立てるには、必要な部品がそろっていなければなりません。部品にしても、動きを制御するための電子部品から、望まれる機能を満足させるための機能部品や見た目や使い勝手に関わる外装/外観部品まで多岐にわたります。これらの部品はいろいろなところで作られて運び込まれてきます。そしてこれらは要求されている性能/機能に合わせて設計/デザインされています。 ここで、やっとこのブログの本筋である「デザイン」という言葉が出てきました。 デザインの作業が行われるのはお客様が商品を手にする時期よりもかなり前に為されています。また、デザインの作業工程をどう計画するかということは、その後の発売までに控える工程から延々と遡って考えられているのです。 ある企業の場合で言えば、「何年度にいくらの収益を出すためにとか、どんなブランドイメージを構築したいか」という将来の目標を実現するために有形無形の商品開発をしているのですが、目指す最終状態から遡って各々のマイルストンの時期や内容が設定されています。 つまり、商品開発プログラムの日程はおしりから遡って作られています。それはデザイン工程も同様で、 [試作確認]試作品の確認を行う⇒[デザイン終了]デザインの最終アウトプットを作る⇒[生産展開]整合性のとれたアウトプットを作るために生産条件をすり合わせる⇒[デザイン決定]詳細の生産条件を折り込むにはデザインが絞る⇒[デザイン提案フェーズ]各種条件のすり合わせとデザインの絞り込みを行う⇒[デザインコンセプト決定]デザイン開発の方向性の決定を行う⇒[商品コンセプト承認(商品企画部門のイベント)]商品競争力の確認を行う、というような流れになっています。 このようにデザインの工程においても、最終あるいは次の工程を基にそこへ至るには何ができていなければならないかということを基軸にしてプログラムが考えられています。 デザイン工程における意思決定イベントと決定者 前項では後ろからデザインのイベントを説明しましたが改めて時間軸の前の方から書くと、 [デザインコンセプト決定]:デザイン開発の方向性の決定 [デザイン提案フェーズ] :各種条件のすり合わせとデザインの絞り込み [デザイン決定] :デザインとしての最終形決定 [生産展開] :生産条件とのすり合わせ [デザイン終了] :デザインの最終アウトプット [試作確認] :試作品の確認この様になります。 これらのイベントの中でデザイナーにとって一番重みがあるイベントは、[デザイン決定]です。ここでは、複数案ある中から一つが選ばれます。自動車のようにモデルチェンジのスパンが長い商品にとっては自分のデザインが最終決定に残るというのはとっても大切なことなんです。 さてここで、デザイナーの視点からデザインマネージメントの視点に見方を変えると、これらのイベントをどのように行うのかが大切になります。 どんな情報やどんな形態で提案物を見せるのかとか出席者及び論議のポイントを何にするのかとか、そして最後に意思決定者(議長)を誰にするのかがデザイン意思決定会議を開催するうえで大切な項目になります。 特に意思決定者(デザインを決めるのは誰かということ)を誰にするかは企業の中でのデザイン部門のポジションや企業がデザインに対してどれほど重要視しているかによって変わってきます。 ここに意思決定プロセスとして代表的な例として二つのケースをあげます。 ひとつは[デザイン決定]を企業のトップ(社長)が行うケース<図‐a>、もう一つは[デザイン決定]はデザイン部門が行うケース<図‐b>があげられます。 [デザイン決定]を企業のトップ(社長)が行うケース <図‐a>は[デザイン決定]をピークに置いてそこに至る会議体毎に『部門長⇒関係役員⇒社長』とレベルを上げ、[デザイン決定会議]においては関連各部門から意思決定に必要な情報提供がなされ社長がデザイン決定を行います。 [デザイン決定]後の工程については関連する各部門が実行責任を持ち、都度必要な論議を行いながら工程を進めます。 [デザイン決定]をデザイン部門が行うケース 一方<図-b>はデザインを決めるのはデザイン部門です。デザインに関する実行責任及び説明責任をデザイン部門が担うという形態だと考えられます。 もちろん関連各部門との協議は必要な時期に行われるでしょうがかなりデザイン部門の責任が重たいと考えられますが逆の視点で考えるとデザイン部門の自由度が高いという見方もできます。そして、このケースの社長のかかわり方はどうかというと開発物が商品として出来上がったところで確認して「承認」するという役割を担います。 どちらのケースが良いかということは分かりません。扱う商品の性格、企業の体質や組織構成、経営におけるデザイン部門の位置づけ、デザイン部門の力量などなどいろいろな要素が絡み合うので、デザインマネージメントに関わる人たちは知恵を絞っている事と思います。 もう一つ付け加えるとここで紹介した以外の意思決定の工程を採る企業もあると思うので、興味のある方は調べてみて下さい。 まとめ ここで書いたことを改めてまとめると。 開発工程は後ろから考える。プロジェクトマネージメントでも同様のことが言われていますよね。最終目標から遡って何をどうするか考える デザイン決定のしかたは企業によってまちまち。ただし好き嫌いで選んではいません、関連部門がそれぞれの責任領域でリコメンドを出しているはずです ここまで長い文章になりましたが、ご一読ありがとうございました。筆者経歴株式会社346 デザインコンサルタント 我妻 亨37年間自動車会社のデザイン組織に勤務。内装デザインに6年間従事したのち、デザインのマネジメントの関わる業務に携わる。デザイン調査・企画、デザイン意思決定、デザイン総務、デザイン人材育成、課題解決などに従事。その間海外駐在、デザインコンサルタント会社出向、企画統括部異動など本体周辺部門での業務も経験。(注1) すべての企業がここに書かれているとおりのことを実施しているとは限りません。企業の歴史や業態によっていろいろな違いがあることをご了承ください。(注2) ある製造業のインハウスデザイン組織についての記述ですが、秘匿にかかわる事例は避け、現時点で共有できる範囲にとどめてあります。関連記事デザインマネジメントのこぼればなし 第1回 「デザイン組織のいろいろな人々」デザインエンジニア概論 第1回「デザインエンジニアとは」ハードウェアスタートアップのデザイン戦略 第1回「日本の製造業概況」デザイナーが知っておきたい 知財文献紹介【第1回】電池式携帯電話用充電器まんがでわかるインダストリアルデザイン 第1話「インダストリアルデザインってなんだろう?」デザイン漫遊記 ① スティックレー家具346 COMPANY LOG | 創業ストーリー<株式会社346について>346(サンヨンロク)はデザイン経営を中核にしたものづくりでテクノロジーの民主化を目指す開発・製造総合支援企業です。インダストリアルデザイナー、ハードウェアエンジニア、ビジネスコンサルタントなど様々な専門家で構成されています。346へのデザイン・製品開発依頼はCONTACTよりお問い合わせください。<ものづくりが好きな仲間を探しています>弊社346ではデザイナーやエンジニアを募集しています。興味関心がある方はCAREERSよりお問い合わせください。<連載メディアを募集しています>弊社346では、本記事の連載または出版にご協力いただける企業を募集しています。興味関心がある方はCONTACTよりお問い合わせください。参考文献1.ー