新着記事はTwitterでご連絡いたします。下記URLから是非ご登録ください。Twitter: https://mobile.twitter.com/346design 特許、意匠などに付随する文献を紹介する第5回目です。本連載は筆者が気になって調べてみた知財を紹介していきます。 今回は偶然手元にあったゼブラ社のサラサボールペンが目に止まったので、サラサに搭載されているカムを用いたノック機構を……と思ったのですが、調べているうちに少し興味深い文献が出てきたので、今回はそちらを紹介します。 紹介する発明は、名古屋工業大学とゼブラ社による共同出願の文献です。 カムを用いたノック機構については以下のサイトで図付きの解説がなされていますのでご参考ください。ノック部材を押すことで回転子が周り、その回転子が中駒部の溝にはまったりはまらなかったりすることで、リフィールが収納状態、筆記可能状態になるという仕組みです。同じ動作で出たり引っ込んだりするノック式ボールペンの謎:身近なモノから学ぶ機構設計“超”入門(4)(1/3 ページ) - MONOist (itmedia.co.jp)写真:筆者撮影特開2017-047671【発明の名称】筆記具【出願人】 国立大学法人 名古屋工業大学,ゼブラ株式会社【図20】出典:J-PlatPat,特開2017-047671 こちらの出願は特許6647518として登録されています。 添付されている図面はスプリングが少し違う描写ですが、ほぼ市販のサラサと同じ構造のようです。 本発明の【背景技術】の欄では、【先行技術文献】では筆感を「バネの弾性力の変動を筆記時に感じ取ることで認識する。」としているが、ばねだとペン先が大きく移動し、筆記者が違和感を感じるの恐れがある、と発明者は述べています。 ゆえに本発明は先端の筆感切り替え技術において、ペン先が軸筒に対して移動する量の低減を目的としています。 ところでこの文献、どこか聞き覚えがあるワードがいくつか出てきています。…ゼブラ……名工大…ペン先がブレない…そう!これは2018年にゼブラが『“ストレスフリー”な書き⼼地を実現。 筆記時に⽣じる振動を制御した、これまでにない新しいボールペン』として発表した大人気ボールペン、『ブレン』の研究段階での成果を権利化したものだと推察されます。 “ストレスフリー”な書き心地を実現。筆記時に生じる振動を制御した、これまでにない新しいボールペン『ブレン』12月12日(水)発売|ゼブラ株式会社のプレスリリース (prtimes.jp) 気になる内容のほうですが、ノック機構の後側軸筒と、グリップのある前側軸筒の材質違いによる筆感の比較が(図19)や、ノック部材にコイル、回転子に永久磁石を組み込み、電源オンオフの磁界変化によって筆感を変化させる、などといった非常に興味深いものです。 果ては制御基板とバッテリー、無線モジュールをクリップに内蔵し、スマートフォンで無線制御する実施形態まで記載されています。 さて、今回は市場に出た製品の研究段階の成果を権利化した文献を紹介いたしました。 本来はノック機構の回転子についてみてみようと思ったのですが、調べていると思わぬところで知的好奇心をくすぐられる文献に出くわしたということです。 目的のある検索だけでなく、息抜きに適当に気になった製品を、それらしいワードやFIタームで絞絞込、検索に出てきた文献を目に通すだけでも面白いものです。 今回はここまでとし、次回も是非宜しくお願い致します。参考文献1.J-PlatPat,特開2017-047671,筆記具2.PRTIMES,“ストレスフリー”な書き心地を実現。筆記時に生じる振動を制御した、これまでにない新しいボールペン『ブレン』12月12日(水)発売|ゼブラ株式会社のプレスリリース (prtimes.jp)